2013年8月31日

ジオメディアサミットに行ってきた

もう1ヶ月くらい経っていますが、先月はジオメディアサミットに行ってきました。 今回は地図の話がメイン。

ここ数年では単なるアプリケーションのひとつではなく、あって当然のインフラのように考えられるようになってきましたが、 だからこそ、誰がどんなデータに関心があるのか、ということを考える機会になったと思います。 国土地理院の方のお話を聴ける機会は多くないはずですので、そういった意味でも良いイベントでした。

Togetter のまとめは3つできていました。

インターネットウォッチにも記事が上がっています。 とても詳細まで拾い上げられていますので、読み応えがあると思います。 運営、講演者ともにボランティアによる運営ですが、こうしてメディア記事にまとめて頂けるとありがたいですね。

基調講演 - 1

基調講演ひとつめは「ウェブマップとスマホの先にあるもの」と題して Yahoo! の河合さん より。 CMO室とは "Cheif Mobile Office" の略だそうです。 最近では元アルプス社の人が中心となって Map Innovation Center が誕生したとのこと。

位置情報自体は昔からありましたが、時代の変遷とともにそれが記録できるようになってきました。 最初はお店情報などの最初は静的な情報。 次に「誰がどこにいます」などの動的な情報。 スマホ時代では「チェックイン」といった新しいアクティビティが発生してきましたが、 それが位置情報のカンブリア爆発とも呼べるほど急激に増加してきています。

Yahoo! では「みんなで作る地図」というプロジェクトがありました。 年間16万件の投稿があったそうですが失敗プロジェクトという位置づけ。 正しい情報をください、という直接的な表現だとうまく伝わらず、マニアな人は集まるがコミュニティを形成できなかったのが失敗の原因です。 しかし、この頃から「アカウントと位置情報が結びつくと大きなプラットフォームになるかも」という機運は高まっていました。 最近では Facebook や Foursquare で友達が行ったお店や「いいね」したお店が地図に出てきて欲しいところなので、 分散したアクティビティをつなげる方法が重要になってきます。

このような時代において「そこに店がある」という公知のレベルで競っていても仕方ない、という主張が強力でした。 具体的には、「オープンデータ」を促進するために Lisra を立ち上げたそうです。 基本データは共有して違うレイヤーでの競争を促進していきたい、という意思の表れです。 実際、面白いアイデアを思いついたものの、基本的な位置情報を簡単に入手できずに四苦八苦する、 というケースが顕在化してきています。 お店の名前や緯度経度、建物名称などはみんなでオープンに共有できると良いですね。

マッピングに関して言うと、新宿西口の構造など、二次元の考え方で実際の構造を表現できない場所もあります。 これら建物も、アクティビティに合わせて投影できると良さそうですね。

基調講演 - 2

基調講演ふたつめは 国土地理院 の藤村さん。

電子国土ポータル では 電子国土Web.NEXT を公開しています。 OpenLayers の API とサンプルも公開してくれています。 Webサイトを作成するときはロゴを出すだけでOK (利用規約) で、eコミマップというソフトウェアで使われているそうです。 標高タイル、標高API も利用できるので、三次元で表現したい場所も実現できるはずです。 Github に gsi-cyberjapan というアカウントがありますので、 詳細な技術的なことはこっちを見るのが良さそうです。

国土地理院は災害対策基本法に基づく指定行政機関なので、災害対策にも力を入れています。 災害情報もいち早く取り込まれるそうなので、地震や大雨があったときは確認してみると良さそうですね。

それにしても、国土地理院の立ち上げに尽力した人は技術畑出身が多く、 官公庁にしては珍しいのではないかと思いました。

おまけとして、「地理院マップシート」という、住所から緯度軽度を算出できるエクセルを公開しています。

パネルディスカッション

続いて、少し先の2015年の地図の在り方について話すパネルディスカッション。 基調講演をして頂いた2人に加えて、ゼンリンデータコムの持地さん、オープンストリートマップの古橋さん、 Google Developers Expert の安藤さんの計5人が議論を交わしました。

まずは自己紹介と各サービスの紹介。

ゼンリンAPI はレベニューシェアの考え方でスタートアップを支援しているそうです。 単なる地図表示だけでなく、お店の検索や経路検索機能も提供しているので、ぜひ使ってください、とのこと。 曰く、素材は持っているけど料理はそこまで上手でない、とのコメント。

Google Maps は "A Brief History of Google Maps" というページがあり、 これまでの歩みを順を追って振り返ることができます。 時系列の情報を地図を使って眺める作りはとても分かりやすいですね。

Open Street Maps はニッチな機能の紹介。 店舗の営業時間を表す opening hours には「日の出から日の入りまで」というオプションもあるそうです。 ラーメン屋さんだとスープ終了するまで、という営業時間もありますので、単なる数値だけではないデータ表現ができるのは嬉しいですね。 JavaScript のライブラリで opening_hours.js がありますので、頑張れば処理できるのかもしれません。

さて、パネルディスカッションで印象に残ったのは、今後求められる機能について。 例えば子供と一緒にいるとき雨が降ってきたら、といった「コンテキスト」を加味して情報を提供できると良い点。 にも関わらず、地図は無名性が強く SNS は個人に依存するという現実です。 つまり、地図だけではコンテキストが分かりませんので、スマホや SNS と連動して、今どういう状況なのか、 何が印象に残っているのか、どこがオススメスポットなのか、といった情報を加える必要が出てきます。 実際、単機能のアプリが出てきてはいますが、すべてのサービスが継続できるとも限りませんので、 そうした意味でも基本的なデータは共有できるようになっていると良いですね。 また、時間断面をアーカイブしておくと Google Trend のように後から振り返ることも可能で有用そうです。

「継続性」という点で考えると、作るのは楽しいけど品質確認をやりたがる人はいない、という課題もあります。 OSM のコミュニティが拡大したり、センシングを絡めてデータを充実できると良いのですが、決定打は見つかっていません。 海外の Google Maps では Google Map Maker という機能が活発に利用されています。 「地域の情報を追加して Google マップをよりわかりやすく」ということで、ユーザーが地図を更新できるようになっています。

今後の展望では「共通の地図と競争するべき部分」という話が印象的でした。 地図それ自体を欲しい人は少なく、何かしらの目的を達成するために地図を必要とするのが現実です。 これを実現するためには地図としてのプラットフォームは環境に「溶け込んで」いくことが重要になります。 一方で SNS でのオススメ情報も重要で、その重要度はアカウントの信頼性によって変わってきます。 あの人がおいしいと言ったレストランは確かにおいしい、とかそんな話です。 これらを両立するためにはコミュニケーションとプライバシーのバランスが大事になってきます。 これからの地図サービスは、そうした問題を意識させずにいかに使いやすいか、という点で差別化されていくのかもしれません。

終わりに

体調不良で懇親会に参加できなかったのは残念ですが、 改めて地図の基本的な部分の話を聞けたのは良かったと思います。

OpenStreetMap に関しては、つい先日、Foursquare から以下の発表がありました。 日本では未対応のようですが、Foursquare のユーザーが何気なく OSM に貢献するようになると、 OSM の品質もグッと向上するかもしれませんね。

Foursquare だけだと一部のユーザー層しかカバーできていないかもしれませんが、 Microsoft の Bing の検索結果にもたくさん反映されるようになるとちょっと楽しみですね。

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