「アリスとボブとキャロルとテッド」という映画が1969年にあったそうです。Wikipediaの英語版に記事があります。 → 別にこの映画を見たくなったわけではなく、アリスとボブの記事を見て、「へぇー」と思ったのでメモしておきます。
どの世界でも、記号だけだと味気ないので、関係するオブジェクトには名前を付けて区別することがあるかと思います。会議室の名前を第一、第二...とするのではなく源氏物語の登場人物にしてみるとか、コンピュータなどの名前にキャラクターや歴史上の人物の名前を使うなど、無機質な物体に愛着を込めたり単に発音しやすくしたり、あるいは隠語だったりと理由は様々ですが、コンピュータの世界も例外ではなく、特に暗号化の話に登場する「アリス」と「ボブ」は有名です。
アリスとボブが登場するシナリオは極めて簡単です。
アリスはボブに手紙を送りたい。アリスがイヴやマロリーに妨害や盗聴されずに手紙を送信し、ボブはその手紙が確かにアリスから送信されていることを保証するためにはどうすればよいか?別に田中さんと中田さんでも記号のAとBでも何でも構いません。
言葉にするとかなり簡単ですが、日本人の感覚だと「アリスは五十音で先頭だから良いにしても、後の三人の名前の無秩序ぶりはどういうこと?」と思ってしまいます。まぁ、私だけかもしれませんが。
ふらっと話を聞いただけなら特に気にも留めないことですが、複数の書籍で同じ人物名が登場するとやはり気になってしまいます。それで、最初のアリスとボブの記事に戻るわけです。
「アリスとボブ」というWikipediaの記事は日本語でもありますが、あえて英語版を選択したのは、''List of characters''の''Alice and Bob''の部分が詳しいからです。なんでも、言い出しっぺはリヴェストさん(*1)で、1978年のRSA暗号(*2)の論文に端を発するそうです。標題の「アリスとボブとキャロルとテッド」とは無関係とのこと(笑)。なんか歴史を感じます。30年前に作られて現在のコンピュータセキュリティの根幹を成すと言っても過言ではないRSAの論文で、アリスとボブを使おうと思ったわけですよ、リヴェストさんは。
まず、きちんとした成果物(RSA)があり、それを論文という定型に収める。ただ、そこで無機質なA,B,C...だけだと読み手は寝てしまうので、自分なりのオリジナリティを加える。「論文」というとおカタいイメージがつきまといますが、その中でもエポックメイキングとも言えるものにこうしたユーモアを入れられる人は、素直にスゴいなぁと思います。
ともあれ、まずはきちんとした成果があってこそのオリジナリティ。自分にはまだまだ精進が必要だと感じる今日この頃です。日本語も英語も機械語も難しいことはたくさんありますが、テッドのように忘れ去られる(*3)ことがないよう頑張りたいものです:P
- (*1) 著名な暗号の専門家でRSA暗号のRは彼の頭文字である。SとAはシャミエルとアドルマンだが、カタカナで表記してある文書は少ない。
- (*2) インターネットでクレジットカード番号などを入力する場合にはSSL通信が利用されるが、ここでRSAによる暗号化が利用されている。
- (*3) 英語のWikipediaの''List of characters''にはAlice, Bob, Carolは記載されているのにTedがいない(><)
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